本日はAI枠です。
近年AIにcodingを行わせるVibeCording(バイブコーディング)が盛んです。
補完やエラーだけ表示してくれる従来のコーディングから離れ、まるで上級者エンジニアが隣にいる、もしくは上級エンジニアに指示を出してコードを記述させるように錯覚するバイブコーディングは、現代のエンジニアにとって必須級のツール、スキルとなりました。
CursorやGitHubCopilot等をさきがけとし、近年ではGoogleのGemini3発表に合わせAntigravityという新しいツールも登場しています。
「こうしたバイブコーディングのノウハウはエンジニアがコードを書くときにだけ使えるのだろうか?いやもっといろいろな用途で使えるだろう」という疑問を持ちました。
今回はちょっとした実験と開拓としてVibeCordingEditorで小説執筆を行わせていきます。
〇環境
・WindowsPC
・Cursor
〇ViveCordingEditorの特性
AI相手に小説を書かせるというのはChatGPTが登場した初期から行われていました。
しかしながらChatGPT、GoogleGeminiなどのチャットベースのツールでは、膨大な量となる小説の設定や世界観、登場人物の人格をシステムプロンプトに乗せることが困難でした。
具体的にはChatGPTやGeminiなどに今までの話の流れを1文端折らずに設定を含めて送るとメッセージ数の上限が来てしまいます。
また、小説の一部を改修したいという場合等は変更点が見えづらく、加えて毎回コピペで張り付けるなど、毎回の作業が生じてしまいます。
つまりチャットベースのツールでは単独のテキストのみを扱い、テキスト同士が複雑に絡み合って構成されるプロジェクト全体に手が届かない現状があると言えます。 単体の質問や単独の答えを導くにおいてチャットサービスは便利ですが、複雑に情報が絡み合っているプロジェクトは苦手ということです。
ここにViveCordingEditor(CursorやAntigravity)の強みがあります。これらは単なるテキストエディタではなく、フォルダ全体を一つの「プロジェクト」として認識する能力を持っています。
エンジニアが「この関数の定義元を探して」と指示すれば、AIが数千のファイルから該当箇所を探し出すのと同じように、小説執筆においても「フォルダ内の全テキストファイル(設定資料や過去の章)」をAIが常に把握している状態を作れるのです。
これは「RAG(検索拡張生成)」と呼ばれる機能が働いており実現されます。「RAG」はプロジェクト内の膨大な情報から必要とされている情報を引っ張り出すアルゴリズムとも言え、チャットベースではネット上の情報からRAGを行って情報を引き出すことはできても、自分のパソコン内のデータなどプライベートなデータにアクセスすることはできないため、すべての情報を毎回手動で長文で投げる必要があったのです。
設定資料をsettings.md、登場人物をcharacters.mdとして保存しておけば、AIは勝手にそれを読みに行きます。「プロンプトに設定をコピペする」作業はもう不要です。なお.mdとはマークダウン式の意味で.txt(テキスト)でも構いません。 ここではGitHubなどのWebブラウザ上で見やすい形として筆者が好んで使用している形式です。
また、バイブコーディングではユーザーが許可をすれば自動的にファイルが書き換えられます。つまりコピペの必要もなく、文章が直接書き換わります。修正前と修正後の差分(Diff)が緑と赤で表示されるため、AIが勝手に変えたニュアンスを目視で確認し、採用(Accept)か却下(Reject)かを選ぶだけで済みます。
これらからバイブコーディングに対応するエディタソフトウェアを使用することで小説執筆活動が圧倒的に効率的になります。
筆者は次のようにCharactorフォルダの中に各キャラクター設定、Storyフォルダ内に各話、World内に設定等を格納しています。

〇添削
まずは添削を行っていきます。誤字脱字のチェックは膨大な分量に目を通すため人力では限界があります。まずはAIに誤字脱字のチェックをさせます。
①デフォルトのレイアウトで左側のフォルダからストーリーの.mdファイルをドラッグアンドドロップしてチャットのプロンプトに載せます。

続けてタスク内容を記述して実行します。

数秒で誤字や脱字が一覧で表示されます。赤文字部が元の文章、緑文字が新しくAIが書き起こした訂正文です。

具体的には「薄暗いぼろ倉庫の中は」→「薄暗いぼろ倉庫の中"に"は」といった箇所などがピックされます。

Keepを選択することでAIによる訂正を受け入れることとなり、次の訂正箇所のレビューが始まります。もし意図的であったり、AIの訂正を拒否する場合はUndoを選択します。

「静かに時が流れれる。」→「静かに時が流れる」

なおチャット欄には具体的にどのような修正を行ったかをまとめて表示してくれています。

修正内容 三点リーダーの統一: ,,, → … 誤字修正: 「ベット」→「ベッド」(2箇所) 「バック」→「バッグ」(2箇所) 「CIU」→「ICU」(集中治療室) 「幸田」→「神田」(人名の誤字) 「弩派手」→「度派手」 「根の葉もない」→「根も葉もない」 「流れれる」→「流れる」 「こたび」→「今回」 「丁度」→「ちょうど」 「只事」→「ただ事」 「有り得ない」→「あり得ない」 「うなづいた」→「うなずいた」 「抑えてれば」→「押さえてれば」 表記の統一: 「20台後半」→「20代後半」 「公安の男」→「国防省の男」(前後の文脈に合わせて) 「経歴を漁っても」→「経歴を調べても」 読点の修正: 「描画、、」→「描画、」 文法的な修正: 「の中は」→「の中には」 修正を反映しました。他に気になる点があれば知らせてください。
〇伏線チェック
ストーリー作品を作るためには伏線を張り、伏線を改修することが大切です。

伏線に関してもチェックすることができます。ここで問題点として矛盾が指摘されています。修正するかあえて無視するかはユーザー自身に判断がゆだねられています。またこの時にStoryPlot.mdが参照されていますが、これはストーリーのプロット(あらすじ)を定義した自身で作成したフォルダになります。

〇執筆
ではいよいよゼロ一で執筆をさせていきます。

今回はキャラクターファイルを指定してそのキャラクターの幕間の物語を本筋に影響しないように依頼しました。
赤い翼の記憶
2068年 春 - 都心の国立大学
卒業式の前日
桜が満開に咲き誇るキャンパスで、永堂綾は一人、図書館の窓際に座っていた。卒業論文の最終チェックを終えたばかりで、手元には赤いペンで修正が入った原稿が広げられている。窓の外では、新入生たちがスマートアイを操作しながらキャンパスを歩き回っている。その光景を見るたびに、綾の胸には複雑な感情が渦巻いていた。
「綾、まだいたの?」
声の主は、大学時代の親友だった。彼女は綾の隣に座り、窓の外を見つめた。
「明日で終わりね。寂しい?」
「……うん、まあね」
綾は曖昧に答えた。本当の気持ちは、もっと複雑だった。この大学での四年間は、確かに充実していた。しかし、同時に、何かが終わってしまったような、虚しさも感じていた。
「綾、あの件、まだ気にしてるの?」
親友の声には、心配が込められていた。綾は、その言葉に少しだけ顔をしかめた。
「……もう、いいよ。終わったことだし」
そう言いながらも、綾の心の中では、あの日の記憶が鮮明に蘇っていた。スマートアイの画面に映し出された、あの冷たい文字列。そして、その後に続いた、現実の世界での別れ。
一年前の冬 - あの日
大学三年生の冬、綾は初めて真剣に付き合った相手がいた。同じ学部の先輩で、文学を愛する優しい人だった。二人は図書館で出会い、同じ本を読むことから始まった関係だった。
「綾は、いつも本の世界にいるよね」
先輩はそう言って、綾の頭を優しく撫でた。その温もりが、綾にとっては何よりも大切なものだった。
しかし、その関係は、ある日突然終わりを告げた。
綾がスマートアイを起動した瞬間、画面に一つのメッセージが表示された。それは、先輩からの別れの言葉だった。しかし、その言葉は、直接会って伝えられるものではなく、デジタルの文字列として、冷たく綾の目の前に現れた。
「ごめん、綾。僕は、もう君と会えない。理由は、言えない。でも、君のことは、ずっと大切に思ってる」
そのメッセージの後、先輩は大学を去り、連絡も取れなくなった。綾は、何度もスマートアイで連絡を試みたが、すべて無視された。そして、最後に届いたのは、先輩のアカウントが削除されたという通知だけだった。
現実の世界で、直接会って話を聞くこともできなかった。先輩は、まるで蒸発したように、綾の前から消えてしまった。
トラウマの種
その日から、綾はスマートアイを使うことが苦痛になった。画面に映し出される情報が、すべて嘘のように感じられた。デジタルの世界で交わされる言葉が、どれだけ本物なのか、わからなくなった。
「綾、スマートアイ、使わないの?」
友人たちは、綾の変化に気づいていた。しかし、綾は、その理由を説明することができなかった。ただ、スマートアイの画面を見るたびに、あの日の冷たい文字列が思い出され、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。
綾は、できるだけスマートアイを使わないようにした。必要な時だけ、最小限の機能だけを使う。そして、できるだけ現実の世界で、直接人と会って話すことを選んだ。
赤い色への執着
失恋の後、綾は、なぜか赤い色に惹かれるようになった。最初は、偶然だった。街を歩いていて、赤いバイクが目に入った。その瞬間、綾の心に、何かが響いた。
「あれ、欲しいな」
綾は、その赤いバイクを見つめながら、そう呟いた。赤い色は、綾にとって、何か特別な意味を持つようになった。それは、失恋の痛みを忘れさせるものだったのかもしれない。あるいは、新しい始まりを象徴するものだったのかもしれない。
綾は、バイトをして、お金を貯めた。そして、卒業を目前にした春、念願の赤いバイクを手に入れた。
「綾、それ、派手すぎない?」
友人たちは、綾の選択に驚いていた。しかし、綾は、その赤いバイクを見つめながら、心の底から満足していた。
瑠璃見への決意
卒業が近づくにつれ、綾は、自分の進路について考え始めた。大学で学んだ現代文学を活かせる仕事。そして、できるだけ都会から離れた場所。
「綾、就職先、決まったの?」
親友が尋ねた。綾は、手に持っていた書類を見せた。それは、瑠璃見の町にある学校への赴任希望書だった。
「瑠璃見?どこそれ?」
「田舎の小さな町よ。過疎化が進んでるけど、自然が豊かで、静かで……いい場所だと思うの」
綾は、そう言いながら、窓の外を見つめた。都会の喧騒から離れて、静かな場所で、本と向き合いたい。そして、できるだけスマートアイに頼らない生活を送りたい。
「でも、綾、それって、逃げてるんじゃないの?」
親友の言葉は、正しかった。綾は、確かに逃げていた。失恋の痛みから、スマートアイへの恐怖から、都会の喧騒から。しかし、綾は、それが悪いことだとは思わなかった。
「逃げてるかもしれない。でも、それでいいの。新しい場所で、新しい自分を見つけたいの」
翼のペンダント
卒業式の前日、綾は、一人で街を歩いていた。赤いバイクに乗って、風を切る感覚を楽しみながら。その時、小さなアクセサリーショップの前を通りかかった。
ショーウィンドウに、銀色の翼のペンダントが飾られていた。それは、とても繊細で美しいものだった。綾は、そのペンダントを見つめながら、何かを感じた。
「空に、羽ばたきたい」
綾は、そう呟いた。失恋の痛みも、スマートアイへの恐怖も、すべてを背負って、新しい場所へ飛び立ちたい。その翼は、綾にとって、希望の象徴だった。
綾は、そのペンダントを買った。そして、首にかけた瞬間、何かが変わったような気がした。
出発の朝
卒業式の翌日、綾は、赤いバイクに乗って、都会を後にした。スマートアイは、最小限の機能だけを有効にして、ナビゲーションだけを使う。それ以外は、すべてオフにした。
「さよなら、都会」
綾は、後ろを振り返りながら、そう呟いた。そして、赤いバイクを走らせながら、新しい場所へと向かった。
道中、綾は、何度も翼のペンダントに触れた。それは、綾にとって、何か特別な意味を持つものになっていた。空へと羽ばたく希望。新しい始まり。そして、過去の痛みを背負いながらも、前に進む勇気。
瑠璃見への道
田舎道を走りながら、綾は、スマートアイの画面を見ることを避けた。代わりに、実際の風景を見て、風の音を聞いて、空気の匂いを嗅いだ。それは、綾にとって、久しぶりの感覚だった。
「これが、本当の世界なのね」
綾は、そう呟いた。デジタルの世界ではなく、現実の世界。画面に映し出される情報ではなく、実際に感じられる感覚。
瑠璃見の町に近づくにつれ、綾の心は、少しずつ軽くなっていった。都会の喧騒から離れて、静かな田舎の風景が、綾の心を和らげた。
到着
瑠璃見の町に到着した時、綾は、その小さな町の美しさに驚いた。山に囲まれた静かな町。そして、まだスマートアイのインフラが整備されていない、古き良き時代の面影を残す町。
「ここなら、スマートアイに頼らなくても、生きていける」
綾は、そう思った。そして、赤いバイクを停めて、町を見渡した。
翼のペンダントが、風に揺れて、光を反射した。綾は、そのペンダントに触れながら、新しい生活への希望を感じた。
「よし、ここから始めよう」
綾は、そう決意して、新しい生活を始めた。
後日談 - 2073年春
綾は、今でも翼のペンダントを身につけている。それは、あの日の決意を忘れないためのものだった。そして、赤いバイクも、今でも愛用している。
スマートアイは、最小限の機能だけを使う。瑠璃見の田舎の風景を、デジタルの情報で汚したくないから。そして、あの日の痛みを、思い出したくないから。
しかし、綾は、もう過去に縛られていない。新しい場所で、新しい自分を見つけた。そして、千花という生徒と出会い、教師としての使命を見つけた。
「先生は、どうして私に優しくしてくれるのですか?」
千花の問いに、綾は答えた。
「千花ちゃんが、いつも頑張っているからよ」
それは、本当の言葉だった。綾は、千花の姿に、過去の自分を重ねていた。そして、あの時の自分に、誰かが優しくしてくれていたら、どんなに良かっただろうかと思っていた。
翼のペンダントが、風に揺れて、光を反射する。それは、綾にとって、希望の象徴であり、過去を背負いながらも前に進む勇気の証だった。
正直若干事務的な印象を受け、設定をそのままの形で落とし込んだという筆者の感想です。細かい設定等が反映されておらず、言葉を濁すことを知らないように思えます。しかしながら全くのゼロからここまでのストーリー=骨を構築するといった点では価値が非常にあると感じています。
この素案をベースとして次回は調整を行っていきます。
本日は以上です。