夜風のMixedReality

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Ford GT40 アプリ開発の裏話を読む その③

本日はドキュメントを読みます。

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以前本ブログでも紹介したHoloLens 2用アプリ[Ford GT40]アプリの開発裏話がドキュメントとして掲載されていたので読んでいきます。

〇Ford GT40とは?

 HoloLens 2アプリ[Ford GT40]はル・マン24時間レースでフェラーリを打ち負かしたと呼ばれる伝説のレーシングカーFord GT40の魅力を簡単に体感することができるアプリです。

 アプリは技術を学ぶエンジニアリング、見た目の美しさを見るデザイン、雨や夜間、様々な状況での走りを見るパフォーマンスで構成されています。

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〇Ford GT40アプリ開発裏話 印象的なビジュアルフィデリティの実現

Ford GT40 でサポートされているさまざまな空間的インタラクションの真価はその創造性と視覚的な忠実さです。

開発元であるHappy Finish社 では、60FPSを達成していたようですが、これは315,000ポリゴンに達していても3D モデルの最適化とUnreal Engineのカスタム シェーダーの使用により実現したようです。

開発者である"Lambert 氏は、次のようにコメントしています。

I’m really happy with how we were able to pull together a set of fluid, intuitive interactions into a coherent and engaging narrative, “Clearly, the power of Unreal Engine on HoloLens 2 opens up a new world of opportunity for more surprising and exciting mixed reality experiences. Uncompromised visual fidelity isn’t always the end goal for enterprise applications on HoloLens 2, but when it is, support for Unreal on HoloLens 2 becomes invaluable

「流動的で直感的なインタラクションを、一貫性のある魅力的なストーリーにまとめ上げることができたことに、とても満足しています。"HoloLens 2 に搭載された Unreal Engine のパワーは、より驚きと興奮に満ちた複合現実感を実現するための新たな機会を提供します。HoloLens 2上のエンタープライズアプリケーションの最終目標は、妥協のないビジュアルフィデリティとは限りませんが、そのような場合には、HoloLens 2上のUnrealのサポートは非常に重要になります」

〇ソリューションの供給

 エンドユーザーによるFord GT40アプリ体験と同様に印象的だったのが、Happy Finish社によるソリューションの迅速な提供であるそうです。

 その時間の内訳は、クリエイティブディレクター(80時間)、UXデザイナー(56時間)、UIデザイナー(40時間)、サウンドデザイナー(40時間)、3D/テクニカルアーティスト(328時間)、ソフトウェア開発者(408時間)、テクニカルディレクター(40時間)、プロデューサー(56時間)、品質保証(40時間)となっており、全体で1088時間でソリューションの提供までつぎ込めたようです。

1088時間とは約45日間です。

"ハッピー・フィニッシュでインタラクティブ部門を統括するチーフ・イノベーション・オフィサーのダニエル・チーサムは、「全体として、当初のプロジェクトの見積もりにかなり近い結果となりました」と語る。"Ford GT40 Experience "は、忠実度の高いHoloLens 2アプリが、少ない予算でわずか数ヶ月で完成し、なおかつインパクトのある結果をもたらすことができることを証明しています」。

 現場の開発者からは「開発の観点から、HoloLens 2でUnrealを使用した以前の経験に基づき、Unreal用のMRTKを使用することで、自分に必要な時間と労力が半分になった」、「HoloLens 2を使ったことのない開発者がMRTKを使って開発を始める際の助けになる」という意見が上がったようです。

 この中で「他の開発者が複合現実感に興味を持っていると言ったら、私はただ飛び込んで、HoloLens 2の開発スタックとMRTKをインストールして、やってみることを勧めています。MRTKを使えば、アプリを素早く簡単に作ることができますし、Unrealのビジュアルエディタも非常によく機能するので、HoloLens 2のデバイスがなくても始められます。複雑なことは一切なく、すべてが機能しています」という声もあったようです。

 筆者はまだUnrealEngineでの開発を行ったことがないため近いうちに取り組んでみたいです。

〇Azure

AzureはMicrosoft社のクラウドサービスです。開発者はFord GT40ではユーザー体験を強化するために、Azureの複合現実感サービスを利用する方法をいくつか考えてるそうです。

 例えばよりAzure Remote Renderingを使用し3Dモデルをさらに高精細に描画する方法やAzureからのアプリのストリーミングを利用する方法も想定しているようです。

〇無限の新しい可能性

ドキュメントの最後に次なる展開について述べられていました。

Ford GT40の体験に対するFord社からのフィードバックは圧倒的にポジティブなもので、Happy Finish社とFord社の間で、今後のHoloLens 2プロジェクトに関する話し合いが進められています。

つまりFord GT40の次のアプリが進んでいるようです。

Happy Finish社は、Ford 社との関係以外にも、HoloLens 2 の新しいプロジェクトをすでに開始しているそうです。

このプロジェクトでは、UnityではなくUnreal の MRTK がユーザー体験の大半を占める基礎的な構成要素となります。

新たな可能性を求めてUnrealEngineでのMixedRealityの道を切り開く今後のアプリが気になるところです。